前回は、妻がリビングの棚に置いていたノートと、そこに書かれていた「離婚」の二文字の話を書きました。
▶ 「離婚」の二文字は、今も消えない。リビングの棚で見つけた妻の妄想ノート|占い日記 #10
その最後に、次は私自身の話を書くと予告しました。
今回は、私が「癌かもしれない」と思ったときの話です。
妻の病気のことばかり書いてきましたが、実は、私も病気をしています。
自己紹介のページで、病気のことは少しずつ書いていくと言っていたのは、このことです。
お腹の調子が、なんだかおかしい
2021年の9月ごろのことです。
お腹の調子が、どうもおかしくなりました。
トイレに行っても、便が出ない。
出そうな気がして座るのに、出ない。
そんな状態が、何日も続くようになりました。
最初は、ただの便秘だろうと思っていました。
食べるものを変えれば治るだろう、くらいの気持ちです。
でも、なかなか良くなりません。
トイレに行くたびに、また出なかった、と思う。
それが、だんだん気になってきました。
病院に行こうか、行くまいか。
しばらく、そんなことを考えていました。
50代になると、病院に行くのが少し怖くなるんですよね。
何か見つかったらどうしよう、と思ってしまうのです。
結局、病院に行ったのは10月に入ってからです。
症状を話すと、お医者さんはこう言いました。
「一度、内視鏡検査をしましょうか」
検査の日は、11月の下旬になりました。
1か月ほど、待つことになったのです。
この1か月が、長かった。
今思い返しても、あれほど長い1か月はなかったと思います。
調べれば調べるほど、癌の症状にぴったり

検査を待つあいだ、私がしたこと。
それは、インターネットで自分の症状を調べることでした。
調べないほうがいい。
頭ではわかっているのに、手が止まりません。
便が出ない。
お腹の調子がおかしい。
そうやって検索していくと、ある病名にたどり着きます。
大腸がん。
症状を一つずつ見比べていきました。
……似ている。
いや、似ているどころではありません。
ぴったり当てはまるのです。
これは、その可能性が大きいな。
そう思いました。
そこからは、ずっと心配でした。
すごく心配な1か月です。
「これ、絶対がんだよ」
不安を抱えたまま、私は先生のところへ行きました。
河原町で10年通っている、あの占い師の先生です。
いつもの部屋で、いつものように向かい合って座りました。
そして、話しはじめました。
「これ、絶対がんだよ」
ネットで調べたこと。
症状がぴったり当てはまること。
検査は11月の下旬になること。
私は、自分は癌だ、という話をしました。
不思議なもので、話しているうちに、なんとなく心が落ち着いてきました。
一人で抱えていたものを、口に出せたからだと思います。
先生は、黙って最後まで聞いてくれました。
そして、こう言いました。
「がんじゃないと思うよ」
占いでは、病気を診断してはいけない
ここで、一つ書いておきたいことがあります。
占いでは、病気を診断することはできません。
診断してはいけない、という決まりがあります。
だから、先生が「あなたは病気です」と言うことはできないのです。
それに、病気のことを言い切れないのは、占いだけではありません。
検査を待つあいだ、先生以外の人にも、この話をしていました。
でも、「それは癌だね」と言う人は、一人もいませんでした。
当たり前ですよね。
まだ確定していないものを、癌だと言う人はいません。
占いも、それと同じなのだと思います。
占いだから、そういうことは言ってはいけない。
私は、そう思っています。
だから、先生の「がんじゃないと思うよ」が、何だったのか。
今もはっきりとはわかりません。
先生にも、わからなかったのか。
それとも、優しさだったのか。
どちらかはわかりません。
ただ、私を落ち着かせようとして言ってくれた。
それだけは、間違いないと思っています。
やっぱり、腫瘍が見つかった
11月の下旬。
内視鏡検査の日が来ました。
結果は、やっぱり、でした。
腫瘍が見つかったのです。
「大きな病院に行ってください」と言われ、紹介状を書いてもらいました。
それから1週間ほどたった、12月の上旬。
紹介された大きな病院で、私はこう言われました。
「癌です」
正直に言うと、覚悟はしていました。
むしろ、癌じゃなかったら、この症状はおかしい。
そんな気持ちだったのです。
だから、その言葉は素直に受け入れられました。
それよりも先に頭に浮かんだのは、仕事のことでした。
仕事、休まないといけないかな。
自営業なので、私が休めば、そのぶん仕事は止まってしまいます。
年末も、もう近づいていました。
年内に、なんとか手術できたらいいな。
そんなことを考えていました。
そこからは、検査、検査の日々です。
たくさんの検査を受けて、年内に手術で取ってしまいましょう、ということになりました。
検査の合間には、休んでいるあいだのことを準備しました。
引き継ぎ、というほど大げさなものではありません。
休んでいるあいだに、お願いしておかないといけないこと。
それを一つずつ片づけていきました。
考えている暇なんて、なかったのかもしれません。
落ち込むより先に、やることが目の前に並んでいたのです。
「やっぱり癌だったよ」
手術を待つあいだに、私はもう一度、先生のところへ行きました。
「やっぱり癌だったよ」
先生は、「間違ったね」とは言いませんでした。
言い訳のようなことも、言いませんでした。
ただ、すごく心配してくれました。
そして、「頑張って」と言ってくれました。
先生は、いつも最後にカードを引いてくれます。
1枚のときもあれば、2枚、3枚のときもあります。
この日も、話の終わりに、先生はカードをめくりました。
そして、こう言いました。
「ほら、大丈夫」
正直に言うと、カードの意味は、私にはわかりません。
何を引いても、そう言えるように読んでくれているのかもしれません。
でも、先生は必ず「大丈夫」と言ってくれます。
手術を控えた私には、それが心強かった。
部屋を出るときには、少しだけ背中が軽くなっていました。
それで、よかったんだと思います。
話を聞いてくれて、心配してくれた。
外れたかどうかなんて、どうでもいいことでした。
あのとき私がほしかったのは、当たる占いではなかったのです。
そして、その年のうちに、私は手術を受けました。
病気を言い切る占い師は、ペテン師だと思っていい
最後に、これだけは書いておきます。
病気のことは、病院でしか見てもらえません。
占いに行ったら病気が治る。
そんなことは、ありません。
どういう病院に行けばいいか。
そういう相談をするくらいなら、いいと思います。
でも、もし占いに行って、「あなたは病気です」と言い切る占い師がいたら。
それは、占い師ではありません。
ペテン師だと思って、信じないでください。
仮に、その占い師に本当に何かが見えていたとしても。
それは、言ってはいけないことです。
それを言ってしまうのは、人として失格です。
いくら能力があったとしても、です。
占いを利用する人も、そこはわかったうえで利用したほうがいい。
私は、そう思います。
次回は、時間を少し戻して、10年のあいだに先生に言われて忘れられない言葉のことを書こうと思います。








